Curse of Democracy: Evidence from the 21st Century
claude.icon成田 悠輔氏らの研究によると、操作変数法を用いた分析から、21世紀に入り民主主義の度合いが高い国ほど経済成長率が低く、2020年のコロナ禍でも死者数が多く経済的打撃が大きいという因果関係が示唆されました。この研究は民主主義と経済成長の関係性が20世紀とは変化したことを示唆しており、民主主義のあり方を見直す必要性を提起しています。ただし、変数の選択には恣意性の余地があり、さらなる検証が求められます。 claude.icon
1. 2001年から2019年の期間、民主主義の度合いが高い国ほど経済成長率が低い傾向がみられた。この負の相関は1980年代や1990年代にはみられなかった新しい現象である。
2. 2020年については、民主主義の度合いが高い国ほどGDPの落ち込みが大きく、また新型コロナウイルスによる死亡率も高かった。
3. ヨーロッパ人入植者の死亡率、1500年代の人口密度、法制度の起源、英語や欧州語の使用率、特定の作物・鉱物の生産可能性など、5つの操作変数を用いた分析から、民主主義から経済成長や公衆衛生への負の因果関係が示唆された。
4. 投資や貿易の低迷が、民主主義が経済成長を阻害するメカニズムとして示唆された。2020年については、民主主義国で新型コロナウイルス対策が後手に回ったことが、健康被害拡大の一因と考えられる。
5. これらの知見は、民主主義に関する従来の通説に反するものであり、21世紀に入って経済成長のメカニズムに構造的な変化が生じた可能性を示唆している。ただし非民主主義を肯定するものではなく、民主主義の質的改善の必要性を示唆するものと考えられる。 nishio.icon
"この負の相関は1980年代や1990年代にはみられなかった新しい現象"
"21世紀に入って経済成長のメカニズムに構造的な変化が生じた可能性"
これを詳しく
claude.iconはい、論文では21世紀に入ってから民主主義と経済成長の関係性に変化が生じたことが示唆されています。
1980年代や1990年代のデータを分析したところ、民主主義の度合いと経済成長率の間に負の相関関係は見られませんでした。つまり、この時期には民主主義国と非民主主義国の経済パフォーマンスに有意な差はなかったということです。
ところが2001年以降は一転して、民主主義の度合いが高い国ほど経済成長率が低くなる傾向が明らかになりました。この傾向は2001年から2019年まで一貫して観察されています。
さらに2020年のデータを見ると、民主主義国ほど新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃が大きく、GDP成長率の落ち込みが激しくなっています。
以上の事実から、論文では21世紀に入って民主主義と経済成長の関係性が構造的に変化した可能性が指摘されています。つまり、20世紀までは民主主義が経済成長を阻害するという傾向はみられなかったものの、21世紀に入って新たな阻害要因が出現したということです。
論文ではこの変化の原因として、民主主義国における投資と貿易の低迷、そして2020年に関しては新型コロナウイルス対策の後手後手ぶりが挙げられています。21世紀の国際経済の中で民主主義国が競争力を発揮しにくくなっているのかもしれません。
ただし論文は、だからといって非民主主義的な体制を肯定するわけではないと慎重な姿勢を示しています。むしろ今後は、経済成長を阻害しない形で民主主義の質を改善していく必要があると主張しているのです。21世紀における民主主義のあり方が問われているといえるでしょう。
nishio.iconなぜ投資と貿易の低迷が起きるの?
claude.icon論文では、21世紀に入って民主主義国で投資と貿易の低迷が起きているメカニズムについて、いくつかの仮説が提示されています。
第一に、民主主義国では政権交代のたびに政策の不確実性が高まるため、企業が長期的な投資に二の足を踏むようになるのではないかと指摘されています。民主主義のもとでは政権交代が頻繁に起こり、規制緩和や増税といった政策の方向性が変わりやすくなります。このため企業は投資リスクを感じ、設備投資などを手控えるようになるのかもしれません。
第二に、民主主義国では様々な利益団体の政治的圧力によって自由貿易が阻害されやすいという問題が挙げられています。民主主義のもとでは労働組合などの圧力団体が政治に影響力をもつため、貿易自由化に逆行するような保護主義的政策が取られやすくなります。このため民主主義国は国際分業の利益を十分に享受できず、貿易が低迷するのではないかというわけです。 第三に、民主主義国では所得再分配政策が財政を圧迫し、インフラ投資など生産性を高める政府支出が疎かになりがちだという問題も示唆されています。民主主義国は有権者の人気取りのために社会保障費などの財政支出を増やす一方で、道路や港湾、工業団地など経済成長に必要なインフラ整備を怠りがちです。これが企業の投資を妨げ、また輸出競争力の低下を招いているのかもしれません。 ただしこれらの仮説はあくまで理論的な推論であり、実証的な裏付けはまだ十分ではありません。論文でも、民主主義が投資と貿易を阻害するメカニズムの解明は21世紀の政治経済学の重要な研究課題だと述べられています。今後の実証研究の深化が求められるでしょう。
nishio.icon"さらに、この相関関係は因果関係でもあることを発見しました。"根拠は?
claude.icon論文では、民主主義と経済成長の負の相関関係が単なる偶然ではなく、因果関係である可能性が高いことを主張しています。その根拠として、操作変数法という計量経済学の手法を用いた分析結果が示されています。 操作変数法とは、ある変数XとYの因果関係を推定する際に、Xに影響を与えるが、Yには直接影響を与えない別の変数Zを用いる手法です。Zが満たすべき条件は、XとYの双方に影響を与える撹乱要因Uと相関を持たないことです。このZを操作変数と呼びます。
この論文では、民主主義の度合いを表す変数を被説明変数X、経済成長率を説明変数Yとし、以下の5つの変数を操作変数Zとして使用しています。
ヨーロッパ人入植者の死亡率
1500年代の人口密度
法制度の起源(英米法かどうか)
英語や欧州語の使用率
特定の作物・鉱物の生産可能性
これらの変数は、歴史的な経緯を通じて民主主義の度合いに影響を与えていると考えられます。一方で、現代の経済成長に直接影響を与えているとは考えにくい変数です。よって、民主主義の度合いと経済成長率の双方に影響を与える撹乱要因と相関を持たない操作変数の条件を満たしていると論文では主張しています。
そして、これら5つの操作変数を用いて操作変数法による推定を行ったところ、いずれの変数を用いた場合でも、民主主義の度合いが高いほど経済成長率が低くなるという結果が得られたというのです。操作変数法では交絡要因の影響を除去した上で因果関係を推定できるため、この結果は民主主義から経済成長への負の因果関係を示唆するものだと論文では結論付けられています。
これが論文の主張の根拠となっています。ただし操作変数法といえども完璧ではなく、変数の選択には恣意性が残ります。この点については論文でも注意が促されており、引き続き慎重な検証が必要だと述べられています。
narita_yusuke 「民主主義国家の方がコロナ死者が多くて去年の経済成長率も低い」と示してみたら、よく来るのが「コロナ年の超特例を拡大解釈おつw」。いや違います。過去20年間ずっと民主国は専制国より経済成長率が低くてどんづまってる。この図を見てみてね https://pbs.twimg.com/media/E0SCe50VUAIkGxN?format=jpg&name=medium#.png
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